出荷を見届ける - 2019
去年。
寝ている妻子を背に家を出る。東海岸の 10 時は西海岸の 7 時。まだ暗い。ライブストリーム鑑賞会の会議室にいくと PM がドーナッツの箱を持ってきた。有難くいただく。アプリのチームからは自分しか来ていない。HAL の人が一人か二人、そして今日は Marc Levoy が出てきて喋ると聞きつけたリサーチ部門の人々が数名。
歴史上最も発売前にリークした電話機の座を獲得してしまっただけあり、発表会はバーンとした雰囲気が微塵もない地味なものだった。意図せぬ形で退屈な電話機の方向に向かっている、のだろうか。地味で売れるのかは謎だが。高いし。
今年は二年目だけあって、活躍とは言えないまでもいちおう何らかの仕事はした気がする。ハードウェアのメモリも増えることだし去年ほど大変ではないかと思っていたが、よく考えるとアプリは引き続き古いハードウェアで動かす必要があるし、アルゴリズム部門のやつらをはじめ人々はガンガン機能をつっこんでくるのでそれなりに仕事はあった。
もともとクライアントサイド AI/ML の舞台という淡い期待をもって異動してきたチームだけれど、アプリというのはそういうファンシーな話以前に「いつもちゃんと動く」という暗黙の期待を満たす必要があり、カメラは用途の都合から特に期待値が高い。さっと起動してぱっと写真をとれないと、たとえば子供がファニーな踊りを披露した瞬間を逃してしまう。「ちゃんと動く」という観点から見ると巨大で複雑で計算資源を hog し UI も増える AI 機能たちは邪魔にしかならない。
自分は「ちゃんと動く」を維持するのが主要な仕事なので、それを邪魔しがちな割に特別素晴らしい何かを実現してくれるわけでもない AI というものへの評価は自分の中で下がり続けている。フェアな評価ではないかもしれないが、目の前でおきていることは認知への影響が大きいのだよ。たとえば今年のカメラアプリで自分が一番評価している新機能は「カメラモードでシャッターボタンを長押しするとビデオを撮れる」というものだが(たまたま iPhone 11 にも同じ機能が実装され、人々は先を越されて悔しがっていた。) ここには微塵も AI の姿はない。
まあ Live HDR+ は ML based な上に実際インパクトのある機能なので ML/AI がぜんぜん意味ないとはいわないけれど。AWB もついにぜんぶ learning based になったらしいし。なお Pixel Neural Core はすげえ使ってるよ。すくなくともカメラでは。Pixel Visual Core も無理やり NN のバックエンドになってたけど、専用の回路の方がきっといいのでしょう。
電話機の発表会に話を戻すと、今年はどういうわけか以前ほど強く "AI" を全面に押し出さなくなっていた気がして、そこは自分の価値観との align という点でよかった(これについては別に書きたい。)まあアシスタントとか文字起こしつきボイスレコーダーとか、いわゆる "AI 機能" なわけだけれど、その二文字のアルファベットを連呼しないだけでも前進といえる。我ながらなんてえらそうなコメントなんだ。
発表会がおわったあとは自席に戻り, 開発に使っていた Pixel 4 XL を dogfood 用にセットアップ。出荷は来週らしいけど、もう持ち歩いてもいいでしょう。(というか本当は発売前に使ってバグ報告などをしなければいけなかったんだけどね。)以下感想:
- CPU (Snapdragon 855) はいちおう速くなっている。ベンチマークだけでなく、さわってもわかる。
- Pixel 3 と比べるとやはりでかくて重い。カメラとして使うにしても小さい方がホールドしやすくて好き。なお Max な iPhone はもっと重いらしい。ハイエンド電話機の重量化。
- 顔認証、別に遅くはないが自分はデバイス背後での指認証が好きだったので落ち着かない。慣れるだろうか。この議論は iPhone および Galaxy ユーザが繰り返したものなので、ことさら追加で書くことはない。
- カメラ。光学ズームあるのはいいもんです。他社製品は二年くらい前からふつうにみんなレンズ2つなところにようやく追いついた・・・というと語弊があり、最近のハイエンドはレンズ3つが主流。一周遅れ。
- ケースは以前より布っぽさが薄れ、硬い手触りになった気がする。そのうち熟れるかしら。
- 手をひらひらする機能は使いみちがわからない。
今日から使って参ります。