Big Blurry Picture

このパンデミック、どう終わるのか。誰も知らないわけだけれど、それでも雑にウェブの記事を読んで分かる範囲のことを咀嚼したい。そのために think aloud writing してみる。

おおざっぱに3つのパターンがある。

  • パターン 1: 感染者を隔離してウイルスが天寿を全うするのを待つ。ウイルスは世間から消える。
  • パターン 2: ワクチンが開発されて人々がそれを接種して免疫を獲得し、社会活動ができるようになる。Coronavirus は今の flu みたいな存在になる。
  • パターン 3: 人々がくまなく感染し、結果として抗体を獲得する。そして社会活動ができるようになる。

パターン 1 の隔離は、感染者の多すぎるアメリカではもう無理と言われている。

パターン 3 は herd immunity (集団免疫?) と呼ばれているもの。これは望ましくないとされている。なぜならパターン 2 より沢山人が死ぬから。数百万人の死者が予想されている。人口の数パーセント。自分も普通に死にかねない確率。医療機関がパンクして治療を受けられない人が増えるので、死亡率もあがる。

あとパターン 1,3 にしても最終的にワクチンは必要である。なぜならウイルスは他所からやってきたり mutate したりするから。

というわけでアメリカは長期的にはパターン 2 を目指している、はず。

ワクチンの開発には「最速で」12-18 ヶ月かかるとされている。つまりもっとかかる可能性もある。個人的には、世界の科学者が総出でがんばっているので割と楽観視している。一年半待てばなんとかる。なってほしい。治療薬の方はそんな期待してない。

パターン 2 を目指しても、政策の失敗などでウイルスの配布まで持ちこたえられず、望まざる形でパターン 3 に入り込んでしまう可能性も割とある。集団免疫って、聞こえはいいけど要するに全滅だからね。

つまり人類は集団免疫という名の全滅を免れるため医療機関が崩壊しない速度まで感染の広がりを抑えつつ、ワクチンの開発を急いでいる。全滅とワクチンの戦い。またの名を flatten the curve.

実際は医療機関はある程度は崩壊しそうに見える。つまり全滅とワクチンの戦いのうち、ワクチン圧勝の見通しは薄い。勝つにしても、大きなダメージは受ける。つまり数百万人は死ななくても十万人以上は死ぬという見通しが発表されている。もう一万人しんでるわけで、10x はそんな遠くない。あと地域により医療崩壊の程度にはばらつきがある。ベイエリアは NY ほどではないにせよ人口あたりの感染者が多く、崩壊しやすい側にいる。


そんじゃ 18 ヶ月 shelter-in-place で WFH しますかというと、それも現実的ではないと多くの人々は信じている。

自分とかはインターネット産業のホワイトカラーなのでやれと言われればやるが、アメリカ全体では既に一千万人くらい失業しており、この数はまだ増えると見られている。仮に数千万人(ざっと人口の一割以上)が失業した状態で国を維持するのは無理。就業可能人口の 10% じゃなくて全人口の 10% だからね。失業率 10% どころじゃない。

インターネット産業にしても、一番したのハードウェアやインフラが作れなくなってしまったら困るし、サービスを維持したところでユーザが失業して金がなかったら売上崩壊。広告産業とかガチで滅びかねない。Amazon だけは生き延びるかもしれないが・・・。

なので感染が「落ち着いたら」なんとなく「経済活動を再開」したい。政府含めた人々はそう考えている。しかしそれがどのように起こるのかはわかっていない。


最悪のシナリオ。再開以前に shelter-in-place が十分に機能しなくて全滅/集団免疫コースに突入すること。沢山の人が死に、集団が免疫を獲得し、ゲームオーバーののちに経済活動再開。

しかし人口の数パーセントが死んだ状態で再開する経済活動とか想像の範疇を超えている。最悪シナリオの終了までにどのくらい時間がかかるかは、死者数とのトレードオフ。数ヶ月から一年くらいだろうか。

ただ常識的に考えると行政は感染速度を見ながら lockdown の強度を強めていくはずなので、仮に現状の shelter-in-place が不十分だとしてもゲームーオーバー前のどこかで「落ち着く」ことは期待できる。なのでこの最悪シナリオは unlikely ・・・な気がする。

最悪シナリオのバリエーションとして、shelter-in-place が機能したのに油断して経済活動を再開したらまた感染が広がってあわてて lockdown ... みたいのを繰り返すうちに気がついたら全滅したりワクチンができたりするケースも考えられる。非現実的だと思っていた「18 ヶ月 shelter-in-place 」が望まぬ形で実現されてしまう。行政/国家の実力次第では、この展開はありうる。経済は崩壊。アメリカの財政赤字 $100 trillion, みたいな世界。 全滅よりはありうる展開。


したがってやるべきことは:「感染が落ち着いたら」再び流行らないよう「なにか手を打ち」、その準備ができたら「段階的に」すこしずつ「経済活動を再開」したい。ここまでは概ねコンセンサスがあるようにめる。ただしその「打ち手」がなんなのか、どんな「段階」を踏むのかは、よくわからない。

基本的な考え方としては、shelter-in-place 成功後の「落ち着いた」状態を冒頭のパターン 1, すなわり「隔離成功」の近似とみなす。つまり shelter-in-place によってウイルス保持者を「だいたい隔離できた」とみなす。

理想的な世界ではこれは正しいとされている。shelter-in-place の期間中に新しい感染が発生しなければウイルスは天寿を全うしていなくなるわけだから。ただ現実的にはそんわけなく、近似によるエラーがある。このエラーは何らかの方法でフォローしてやる必要がある。つまり、ウイルスはそんなに沢山はいないにせよある程度は残るから、それが再び感染爆発しないように手を打ちたい。その打ち手に人々は考えを巡らせている。

まず医療体制の強化。ventilator を増やすとか人増やすとか。医療体制が強化されるとそのぶん感染「爆発」の閾値があがる。これは再開とかいう以前にいますぐ必要なので、各自治体ががんばっている。でも、そんな増えなそうだよね。ぶっちゃけ。指数の力の前にこの小さな定数項がどれだけ助けになるのか、割と疑問。

あと言われているのがテストの徹底。テストを徹底することで、感染した人の隔離を確かなものにできる。テスト結果がネガティブだった人たちから「段階的に」経済活動に復活できる。とはいえ全人口をコンスタントにテストするのが現実的でない以上、どのように人々をテストすればいいのか自分にはよくわからない。この coronavirus は無症状の感染者が多いと言われている。なので熱などの症状がある人だけをテストしてもだめ。だとしたらテストの徹底なんで可能なのだろうか。

更に雑な(しかし頻繁に目にする)近似:テスト結果がマシだった地域(たとえば州)から「段階的」に再開する。でも人々が普通に移動できる以上、マシでない地域(たとえば NY) から人が来たりするよね?どうすんの?州境を封鎖すんの?できんの?

逆側の、より精緻な指標として、感染を生き延びてウイルスへの抗体が確認できた人を「部分的に」経済活動へ返していく方法も議論されているが・・・。まあその生存者が出歩くのは別にいいと思うけれども、それ経済活動を賄えんの?たとえば 1-2 割のランダムな住民が出歩けたところで、そのひとたちが行く職場や学校や遊び場は存在できるのだろうか。想像するのが難しい。ゲームーバーシナリオの中盤意向なら意味あるかもだが・・・。

個人や州単位の「部分的再開」とは別に、social distance を残したままでの再開に関する議論も見かける。たとえばレストランの席数を減らして social distance を保てるようにする、飛行機も有効席数を減らす、ビルの入り口で体温測る、公共ゾーンを除菌清掃する、みたいな。これが可能なビジネスもあると思うが、一方で線引きが曖昧で危うい橋にも見える。序盤での抑制に成功したアジア方面はこれをやっているように見える。

なお自分の個人的な関心としては学校/幼稚園どうするんかな、というのがある。小さい子供に social distance 守らせるとか不可能。中学、高校から上くらいならオープンできるのかもしれないが・・・。

そんな感じで、自分は経済の早期部分的再開というアイデアをあまり信じていない。「実施されない」とは思っていない。「実施されるが失敗する」と思っており、失敗の程度を心配している。

部分的再開のアプローチについては、アジア諸国やイタリアが先を行ってなんらかの結論を出してくれることを期待している。政府がそれらの学びをどの程度取り込むかには、若干悲観的。まあニュースは注視してます。


これを踏まえ、我が身について考える。

自分は(すぐには失業しなそうという意味で)WFH 可能な職についており、経済活動の早期再開にそれほど人生がかかっていない。幼稚園の長期閉鎖に伴う子の発達への影響は心配している一方、まあ一年くらい幼稚園にいかなくても人生踏み外したりはしないでしょう。就学後の学業が一年遅れるよりインパクトは低い。子が家にいると大変で仕事の生産性は激減だが、一年くらい仕事のはかどらない時期があっても、クビになるリスクはそれほどでもない。(長期化すると厳しいが。)

一方で、自分は若くない。そして喘息持ちである。喘息は covid-19 とセットで complication を起こすリスクがあり、要するに病気になって死ぬリスクがちょい高め。子も似た傾向を持っているように見える。なので危うい橋を渡ってまで経済活動再開に付き合いたくない。

といったことを踏まえると、世間の経済活動がどうであれ個人的にはワクチンを打つまで WFH したいなーという気持ちがある。しかし世の中の経済活動再開への eagerness を見るに、勤務先を含めた世間の人々は早期再開に乗り込んでいくだろうと想像しており、気が重い。世間一般はともかく勤務先は長期 WFH 側に倒してくれるといいんだけれど・・・。最悪一旦パートタイム労働に切り替える必要があるかもしれない。

ただこれは現状の不透明さに対して具体的すぎる心配なので今はほっとく。

むしろまず心配すべきはパンデミックの悪化。場合によってはガチで疎開が必要になるのではないか。日本も心配だが、相対的な期待値はマシっぽいから。ただそれそれでロジスティクスがだいぶ厳しい。妻子だけ返すのは悪手で家族揃って避難する方が妥当に思えるが、実現のためにクリアすべきハードルが多すぎて思考停止・・・。


書き出してみて、自分は経済の部分的再開というアイデアを信じておらず、それは世間のメディアの主流の態度とは違うことがわかった。あまりうかつなことを口走らないようにしたい。

自分の見通しが外れて部分的再開が成功してくれればそれは全然ハッピーなので、誰かにがんばってほしいもんですわ。


参考リンク