Peer Reviews

人事考課の季節。チームでの tenure が伸びてきたのと隣接チームと仕事をすることが増えた結果、今回は割と多めにピアレビューを書いた(といっても社内的には普通の量)。久しぶりだったので感想。なお社内のピアレビューには大きく「出世用レビュー」と「普段着レビュー」の二種類があり、出世用レビューは一段真面目に書かないといけない。あとは更に気楽な「一言レビュー」みたいのもある。今回は普段着レビューと一言レビューのみ。

まず、できる同僚に「おまえは良い仕事してるぜ!」みたいなレビューを書くのは普段の気持ちを伝える意味でも書いてて気分が良い。ただ「階級の期待値の記述を満たしていることがわかるように書け」と指示されており、そこは難しい。とりあえず自分の気分をバーっと書いた後、肩書期待値表を見ながら事後的に調整している。たぶん良い書き方ではない。

「もうちょっとこうしたら良い」的フィードバック。良い仕事している同僚には「せっかくだからもうちょっと野心的でバーンとした仕事もやろうぜ、こういうのどう?」みたいな謎の励ましフィードバックをしがち。そういう内容は期待されていない気がするが、勢いと野心があってよく働く人々相手にボンクラから言いいたいこととか別にないよね。しいていえば「もうちょっと人の話を聞け」みたいのを言いたい相手はゼロではないが、まあ別に聞かないなりに付き合い方があるので困るというほどではないし。

むずかしいパターン 1. すげーいい仕事をしているが、すげーいい仕事をすることが期待されている階級であるケース。この「ちょういい仕事してるけどそれも給料のうちですよね」みたいな温度感を伝えるテキストはどうかけば良いのかわからん。仕方ないので「すげー良い仕事してるよね!すごいね!」と書きつつ定量的な採点はふつう、みたいになった。もどかしい。

むずかしいパターン 2. 上の逆で、なんかいまいちぱっとしないコード書くなあ・・・と思っていた相手が、大したことを期待されていない階級だった場合。むしろその階級にしは割といいコードだった気もする。この「ぱっとしない」というイメージを払拭するのが難しい。思っていることをバーっとかいても感じわるいだけなので、期待値表の文言を照らしながらなんとなく「この期待値よりはだいぶ良いよ」みたいなドライな記述をした。そして制度が期待しているのはどのみちそういうドライな評価な気もする。しかし書いていて特に盛り上がらない。

むずかしいパターン 3. たいして重要でもない機能のためコードベースを複雑にしている、と自分(森田)が思っている同僚。しかし「たいして重要でもない」は自分の完全に主観的な評価なので、その複雑さは実は割にあっているかもしれない。しかしその複雑さが生み出したバグが自分のところにやってきてその原因究明に追われ本業が進まない、という腹立たしい体験を何度もしているため、自分はその相手を「余計なコードばっかり書きやがって・・・」と恨めしく思っている。ので「もうちょっとコードの品質とかアプリ全体のアーキテクチャとか考慮しませんかね」みたいな苦情をいいそうになるが、一方で難しい技術的な問題を解いているのはそれなりに事実で、あとアーキテクチャ考えるとかは責任範囲外(畑違い)の相手にも思える。うっかりネガティブなレビューを書きかけたが締め切り前に考え直し、期待表と照らしてドライなバージョンに修正。評点も見直した。


たぶんいい仕事をしている相手には(出世用レビューでない限り)心をこめた賛辞を送ればよいのだろう。逆に自分が個人的な主観では好きでない、評価してない相手に対しては階級別期待値表をツールとして使い、個人のバイアスを排して組織の価値観を代弁する。無駄な軋轢を産まないレールとしての階級別期待値表。

いい仕事をしていると自分が評価している、有り体に言うと仕事ぶりを気に入っている相手のレビューに階級別期待値表を使わなくてよいのか。たぶん、ほんとはもうちょっと期待値の記述をベースに書いた方がよいのだろうねえ。自分は期待値表の記述を内心それほど信じていないのでそれよりは心からの賛辞を送った方がよいと思っている。一方で相手にとっては標準化された基準にもとづいて働きの良さを説明してもらえた方が嬉しいかもしれない。つまり、「森田からの評価が高い」よりは「組織にとっての働きの良さを森田が証言している」ほうが良い。どうせなら相手のためになるレビューを書いてあげたい。

しかしそのためには自分が普段から組織の価値観にあわせて価値判断をする必要があるように思える。階級別期待値表の記述を内面化する必要があるというか・・・。

そんなものを内面化してしまっていいのかという倫理的な不安がある一方で、会社員としてはよく理解しておくほうが都合がよいようにも思える。うーむ。良いピアレビュアであるのを諦める、というのも一つの選択だが、はて・・・。

特に結論はない。しいていえば管理職は普段からこういうことを考えてて大変だなと思いました。