WFH Day 1

CA が State Emergency を宣言し Santa Clara County も警戒を高めてきたのを受け、勤務先も遅まきながら自主 WFH を求めてきた・・・とまではいかないが、したければどうぞというフェーズになった。そんじゃやってみっかということでラップトップと開発用電話機を持ち帰り、家からコードを書いてみる。

Chrome Remote Desktop で会社の Linux ワークステーションにつなぐ。手元のラップトップは Chromebook.  こいつに電話機をつなぎ、公式 Linux VM 通称 Crostini で ADB を動かす。同時に Secure Shell 拡張で会社のワークステーションに SSH しつつ ADB のポートを tunnel する。と、あら不思議。Chrome Remote Desktop の中で動く Android Studio でアプリをビルドすると手元の Pixelbook に繋がった電話機に APK がインストールされる。ちょっと感動。さいわい Linux/GNOME の virtual desktop と Chromebook の Virtual Desks はキーバインドが重ならなかったので、ネストした仮想デスクトップで仕事。

なお Macbook だと普通に手元の Android Studio でビルドできるらしく、チームでは Macbook が推奨されている。そんなこといわれてもなーとおもいつつ、ちょうどラップトップの更新をしていい時期にさしかかっていたので注文。Mac OS とかもう使い方忘れちゃったよ・・・。また別の路線として、会社のワークステーションではなくクラウドの VM にデスクトップを置くのもアリらしい。これはまだ試してない。


疫病疎開の WFH なので仕方はないが、仕事は会社でやるのがよいなと思った。これは意外といえば意外だが「仕事をしたくない」と「会社に行きたくない」を混同しなければ自然な結論に思える。つまり「仕事をする」という現実を受け入れたなら、家で仕事するより会社でする方が良い。自分の場合はね。

一般論はさておき自分の身の上について考える。自分はもともと家で仕事をする気はなかった。書斎もないし、今や自分のデスクもない。たまに趣味でコードを書く時は台所のダイニングテーブルにラップトップを置いて書いている。これはエルゴノミクス的にはイマイチだが、腰痛とか肩こりが辛くなるまえに持ち時間が終わるので現実的にはそれほど困らない。

会社はとうぜんデスクもあるし、でかいモニタもあるし、でかいワークステーションもあるし(そもそもこれが必要なのはコードがでかいせいだが)、インターネットは速いし、そのへんに休憩用のソファも転がってるし、雑談したいならテラスもあるし、考え事をしながら歩き回れる空間もある程度はある。コーヒーもあるし、おやつも無限にあるし、食事もでる。空調もちゃんとしている。まあこれは自宅でも大して困らないけれど。

同僚も同じ空間にいるから、ちょっとした用事で捕まえるのに苦労しないし、コードレビューで押し問答になりかかったらデスクまで歩いていって相手の画面で IDE を開き、ほらここが・・・とかいうこともできる。

翻って自宅はというと、デスクはないし、でかい画面もないし(奥様のデスクにはモニタがあるものの、散らかっていてアクセスできない)、CPU はラップトップだし・・・まあこれは特に困っていないが・・・インターネットは遅くはないもの会社ほど速くないし、休憩で座れるソファは捨ててしまったし(無印の beanbag cusion があるが、ソファのほうが快適)、歩き回るには狭いし、コーヒーは自分でいれないといけないし、おやつは限られているし、食事は自分で作らないといけない。今日は面倒なので昼飯抜きにした。

困った時につかまえる同僚もいなければ、無駄にダベる相手もいない。猫はいるが、こいつらは仕事という観点では邪魔である。そして夕方になると妻子が帰ってきて仕事を続けることができない。8時間働けないだよ。

上司や同僚の目がないならサボってインターネットやり放題じゃん、みたいな仮想問答もありうるが、仕事をしなくても給料をもらえる身分ではないので別にサボりたくはないのだよ。むしろ同僚の目のおかげで背筋が伸びるくらいがちょうどよい。息抜き程度にさぼりネットをするのは、同僚がいようが別に構いはしないし。今日はむしろ選択掃除片付け炊事など家事への圧力というか引力を散らかった部屋や溜まった洗濯物から読み取ってしまい、気疲れした。というか部屋を片付けて洗濯して晩飯の準備までしてしまった・・・。

会社にいきたくない理由としてよく通勤を上げるのを目にする。でも自分は片道キックスクーターで 30min 未満なのでそれほどイヤではない、というか、むしろ軽く運動しつつ音楽なり Audiobook なりの音声メディアも消化でき、仕事のはじまりと終わりを仕切るいい節目になっている。仕事に区切りをつける良いで、歩いて五分で会社より、このくらい距離がある方がいいとすら言える。端的にいうと自分は通勤は割と好きである。

というわけで仕事するなら会社いいとこじゃんと再確認した。仕事のためにデザインされた場所なので当たり前なんだけど。


自分の生活は会社で仕事をするという前提にあわせ最適化されているのだから、これはもちろんまったくフェアな比較ではない。仮に生活を WFH にあわせて最適化するとどうなるだろうと想像してみる。

デスク、モニター、部屋。これは金で解決できる。部屋はすごく高くつくが、一方で今の家賃がすごく高いのは会社のそばに住んでいるからなので、田舎にひっこせば家賃の問題は解決する。ただし田舎に引っ越したいかどうかはライフスタイルの選択だからあまり自明でない。あと各人がそれぞれ空間や計算資源を持つのって、規模の経済にあづかりにくから効率は悪いよね。同じ金を払うなら会社に使った方が良いものが手に入る気がする。コーヒー、おやつ、食事・・・もやはりかねで解決できるし、相対的には安いものな気がする。食事はそうでもないかな・・・。

あるきまわるスペースがない。たとえば自分のアパートは隣に公園がある。気分転換に散歩をするのはどうかと試してみた所、そんなに悪くはない。ただ家を出て公園一周、みたいのはやや大袈裟すぎる嫌いはある。休憩コーナーでコーヒー淹れて返ってくるくらいの粒度で一息つきたいことは多い。書斎から出て台所でコーヒーをいれればいいのだろうか。今日は台所のテーブルで仕事をしていたので想像するのが難しいが・・・。

同僚がいない。これは難しい問題で、人々は ZOOM とかを使って乗り切ろうとしているわけだが、どうかね。隣にいる方がずいぶんラクだよね。とはいえテキストでコミュニケートするのも、皆が慣れているならそれはそれでアリとは思う。東京でブラウザやってたときとか、割とそういうかんじだったし。効率が良いとはいえないが、みな等しく効率が悪いなら自分だけ割を食うことはない。

通勤しなくてよい。これは裏を返すと仕事と家庭の区切り目が薄いということで、自分はあまり嬉しくない。WFH するには仕事場の部屋を隔離しろと各種リモートワークガイドは説いているし、じっさいフリーランスのプログラマもしばしば WeWork 的なのを借りている。やはり仕事と家庭で場所をわけるのは大事なのではないか。個人の性格もあろうのだろうけれど。

たとえば自分がワーカホリック独身者だった頃のことを考えると、仕事と家庭(存在しない)を分離するのはどれくらい嬉しかったろうか・・・。それなりに嬉しかった気がするなあ。会社は家事をせず仕事をできるから良いのと同じくらいに、家では仕事のことを考えなくていい、というと大袈裟だけど、目先の仕事に追われなくて良い。そういう安全な空間として、独身者だろうがなんだろうが職場ではない家は大切な気がする。


家で働く良さについても考えてみる。

まず(妻子がでかけているなら)まったく邪魔が入らない。その静寂の良さはある。これは寂しさの裏返しでもあるが、目の前の問題に集中しやすい面はある。ただし、飽きてくるたときに周辺の雑談に耳を貸してたまに割り込んだりする気分転換ができない対価はある。チャットは、その代替にはなり切れていない。これはチームのリモート成熟度の反映かもしれないが、オンラインであまり盛り上がられてもアンチソーシャルメディア勢としては嬉しくない。

静けさの仲間として、思考の自由度は増す。職場のプレッシャーってあるよね。これは気が散るの双対だけれど、一歩下がって考え事をする上で会社ではない場所にいるのは良い。ただし WFH が常態になったとき、この detachment の魔法が持続するのかはよくわからない。たまにだからよいのかもしれない。

通勤がないのは、自分個人にとっては軽運動兼メディア消費の時間が減るだけなので別にたいして嬉しくないが、家族にしてみればそのぶん家事とかに時間を割ける。効率は良い。

同様に、休憩がてら皿を洗ったり洗濯したり、同僚ではなく奥さんとちょっと話したりというのは、家族持ちとしては悪いことではないかもしれない。仕事の隙間にインターネットするよりは健全に思える。

自分はあまりに通勤会社員に最適化されているのでうまく想像できないが、自宅で働くのに最適化した人生にはそれなりの良さがあるのだろうね。ただ大前提として勤務室・書斎はどう考えても必要そうだなあ。


台所のテーブルで働くアパート暮らし妻子持ちの自分は WFH とどう付き合っていくべきか。

とりあえず目先の疫病疎開中は、ムリなくできる範囲で WFH への最適化をすすめるべきだろうね。それは奥様にデスクを間借りさせてもらうことかもしれないし、おやつを拡充することかもしれない。

疫病が一段落したあとはどうか。ここまでの議論を踏まえるなら会社で働く方が良いというのが正しい結論なわけだが、なんとなく、たまに WFH するのは良いことに思える。妻子がいないタイミングで、仕事で込み入った考え事をする時間に充てる、とかはどうか。

なぜたまの WFH をしたいのか。うまく説明するのはむずかしいが、伝統的会社員のライフスタイルに最適化されすぎている自分になんとなく不安を感じる。無理のない範囲で別の側を test the water しておくと、その伝統的雇用が揺らいだ時にすこしはマシに振る舞えるのではないか。あとは単純に、気分転換かな。会社、たまに息苦しいよね。たまにね。