Book: Whilstleblower

Whistleblower: My Journey to Silicon Valley and Fight for Justice at Uber: Susan Fowler

むかし Susan Fowler すげえなという話を書いたが、自分の認識は全然甘かったと深く反省した。件のブログはすごいクールにズバッと相手を切ったように見えたがそれは体裁であって、人生を賭けた一撃だったのだね。そりゃそうだよね。自分は「Stripe で楽しくやってる」とか書いたけど、件のブログを書いたせいで PR からめちゃ煙たがられたりして気の毒・・・だがその気の毒さは Uber が反撃のために送り込んできた私立探偵やおそらくインターネットトロルたちからの攻撃の酷さとくらべると些細な問題に見えてしまうという辛さのスケール。なお今は NYTimes の editor になり、思わぬ形で物書きになるという年来の夢を果たしたそうである。

Susan Fowler は home school だったため小中高と学校にいかず、いきなり大学から社会生活(というと語弊があるが)をスタートしている。それは前にインタビューを読んで知っていたが、その背景になる家庭の貧困についてはこの本で初めて知った。自分を white trash の trailer park コミュニティにいたと書いている。序盤の自伝パートはすごくアメリカ的。

その後アイビーリーグであるところの UPenn に編入し物理学の博士号を目指すが、メンヘル同級生の男に絡まれた上に大学に助けを求めたらトラブルをもみ消したい組織の意向によって逆に学校を追い出されドクターを取れない、のみならず、取得したはずのマスターの学位までなぜか抹消されてしまう。Upenn ひどすぎてびっくり。

この体験を通じて組織でのセクハラの扱いに絶望したことが、Uber での戦いへの備えになっている。UPenn での体験に限らずとにかく人生が壮絶すぎ、しかしその厳しさが Uber と戦う強さを育てたのも事実で、戦う定めの星の下に生まれた人なのだなという感想を持たざるをえない。本人の望みとは無関係に。

そんな Susan Fowler も告発ブログを書いて人生を ruin するのには恐れがあり Uber 脱出成功後しばらくは見ないふりをしていたが、ある日夜と霧を読んで覚悟を決めたという下りがあった。ナチの収容所からの生還譚が超絶ブラック企業の告発を促した。なんとも象徴的。自分もデスマのときに読んでいくらかの勇気を得た遠い記憶があるよ。


ところで Susan Fowler を abuse しつづけていた SRE 部門のクソ管理職チェーンはみな Google 出身者とされており、なんというか、がっかり。この会社のどこかにはきっと今でもこういうクソ管理職がいて、自分はたまたまそういうのを引き当てていないだけなのだろうと思うと薄ら寒い。自分はそうしたクソ管理職と戦う準備ができているか。できてないね。ハズレ上司を引いたら感傷とか責任感とかぜんぶ投げ捨てて逃げ出そうという思いを新たにした。

人々を勇気づけようと書かれた本を読んだ感想が「時が来たら逃げ出そう」なのは我ながら救いがたいが、自分にそうした勇敢さはないとこれ以上ないほどはっきり思い知ることができる本でありました。


本人による audiobook の narration は正直あまりうまくないが、時々感極まっている部分などが生々しかった。まあ、自分で読むべき類の本だとは思う。