Book: Competing with Unicorns

Competing with Unicorns: How the World’s Best Companies Ship Software and Work Differently by Jonathan Rasmusson | The Pragmatic Bookshelf

人気の Agile 入門書 The Agile Samurai の著者が自分の Spotify での体験をもとに "Unicorn" ... いわゆるテック企業、インターネット企業を指す用語として使っている ... の働き方をエンタープライズな読者に説く、という内容。なのだが、だいぶどうでもよかった。

目次を見るとわかるとおり、割と総花的である。薄い本 (150p. 薄いのは良い)なので個々の踏み込みが甘いというか、全然踏み込まない。そして切り口に方法論として軸がない。テック企業の働き方というのは資産(出資金にせよ利益にせよ)があるからできる博打の一部という面もあるわけで、方法論というよりは俺たちがカネののちからでやってることをおまいらもやるといいよ、みたいな話がぼちぼち入り込んでいる。そうでない話題もあるが、そういう話題と混ざってるせいで台無し。

Unicorn (インターネット企業) というくくりも雑すぎる。大企業とスタートアップじゃずいぶん違うでしょうに。そしてスタートアップの方法論というのはここ 5-10 年くらいでだいぶ文書化されたから、この本に新しいところはないように思える。一方の大企業ウェイというのは規模の制約を規模の力でねじ伏せる別のゲームをやっているわけで、スタートアップとは同列に議論できないし真似しないほうがよいものも多い。

偏見だけど, Agile 信者がテック企業に入ったら Kool-Aid でやられてしまったのだな・・・という印象。自分も似たような部分があるのである種の共感がなくはないが、Agile Samurai はもうちょっとマシな内容だった記憶があるだけにがっかり。自分が悲しく汚れちまっただけななのだろうか。

Spotify 固有の部分は半分ゴシップ、半分ケーススタディとして興味深く読んだ。無理に一般化しようとせず What I Learned At Spotify みたいな本にすればよかったのにね。


がっかりの反動で唐突に Eric Ries の The Startup Way を聞き始める。同じくエンタープライズにスタートアップ方法論を売り込む話なのだが・・・この本はいいね。

The Lean Startup は Pivot だの MVP だのを流行らせ growth hack や startup methodology の先駆けになった。そういう movement を生み出しただけあって、Eric Ries の話は説得力があるし、理論もよく整理されている。語り口も良い。この本自体はさすがに三番煎じくらいで新しい話が少ないのかあまり売れなかったようだが、個人的に Eric Ries は割と影響を受けているのもあり、久しぶりに話を聞くと気分が盛り上がる。宗教家としての格の違いを感じる。なお Audio book は Eric Ries 自ら narrate している。さすが教祖。

スタートアップ論には方法論も精神論もあるわけだけれど、unicorns の皆さんと compete しようと思うなら 150 ページの薄い本を読むよりはこの Amazon で The Startup Way の関連書籍に並んでいるような奴らを順番に読んでいく方がいいのではないかなあ。

自分はその手の本には若干食傷気味かつ他人事なので足が遠のいていたが、来年は教養/気分転換/ドヤ顔素材としてもうちょっと聴いてもいいかもしれない。