隣の TLM

近隣チームの TLM の下から二人続けて人が出ていった。他所の部門に移ったという。

TLM というのは TL 兼業の EM で、いわゆる playing manager. 下についている人数は少なめ。専業マネージャへの移行過程であることが多い。といっても特にエラくもならずそのまま TLM を続ける人の方が多い気もする。(なぜならエラくなるのは一般に難しいものだから。)

出ていった人たちはもともと acquihire 的に入ってきた人たちで、それほど能動的にチームを選んでいない。本来やりたかった方向の仕事に移っただけかもしれない。一方で件の TLM は随分と細かいことにうるさいある種の micromanagement をしていたので嫌気の差した可能性も自分は疑っている。他人事なので深くは追求しないけれど。


TLM は専業の EM に比べるとしばしば micromanage しがちに見える...あ、多くの TLM の名誉のために言っておくと、別にみんながみんなそうなわけじゃないですよ。

下についている人数がすくないせいで micromanage 「できてしまう」面はあるだろう。面倒を見る相手がある人数を超えると micromanage は現実的に無理。官僚的にガチガチとプロセスを固めればできるかもだが、幸いそれは組織の風土と相性が悪い。

別の理由として、TLM は TL というだけありしばしば technically opinionated なせいで下々より良いやり方を思いついてしまい、下からの提案を論破してしまったりする。 この「より良い」は当人の主観なわけだが、実際より良いこともよくある。なぜなら多くの TLM たちはエラくなるだけあってエンジニアとしても割と実力があるから。とはいえ当事者の提案する方法を却下して自分の案を押し付けるとか、一般にはムカつくことである。

そういう意味で TLM の micromanagement は伝統的な管理職による micro-management のステレオタイプとは違う。締め切りとか進捗とかにうるさいというより、仕のやり方やソフトウェアのデザインとか実装の方針みたいのにうるさい。しかし下々としてはどっちも等しく嫌である。

そういう micromanaging-TLM の下ではまったく働きたくない一方、peer, team mate としてみると彼らは結構(というかだいぶ)頼りになったりするので気分は複雑。下々を手足のように使い複数人がかりで面倒くさい問題をぱぱっとやっつけてくれたりする。自分も件の TLM にはだいぶ世話になっている。エンジニアリング的な趣味や価値観でいうとチームのなかでいちばん「こいつわかってんな」と感じる。そういう実力派だから下に人をつけられる面はある。


TLM の micromanaging nature はしばしばマネージャとしての成長の過程かもしれない。どうすれば彼らがより良いマネージメントスキルを身につけられるのか・・・は自分が口出しすることではないのでおいておくとして、そういう TLM の下についたらしたっぱとしてどうすべきか。

まず一番いいのはそもそも TLM の下につかないこと。一人で仕事ができ、TLM の「面倒見の良さ」(かぎかっこ)が必要でないと認識されていれば専業マネージャの下で放置しておいてもらえる可能性が高い。自分は今のところこれに成功している。しかし今の勤務先でのキャリア前半、そういう目に遭わなかったのは単に運が良かったからに思える。

もし運悪く TLM に micromanage されてしまったら?

ケンカしても評価が下がったりして損するだけなので、心を無にして指示に従いつつ逃げ出す先を探すの良いのではなかろうか。望まぬ mindfulness skill が問われるけれど、会社員人生そういうこともある。


TLM, 自分でプログラマとして働きつつ追加で people management の仕事を増やされても特に嬉しくない。だから TL 的な立場で自分の能力を拡張する手足として部下を micromanage したくなるのはわかる。自分も同じ立場なら同じことをしていまうかも知れない。TLM がどのような mindset で仕事に望めば皆がハッピーなのか。わからない。わかる必要がない身分を有難く思っておこう。

むかし、隣の同僚が「俺マネージャになるわ」といって TLM になったことがあった。自分はその TLM の下についたが、もともと team mate だったせいもあって特に上下関係は感じなかったし、あれこれ指図されたりもしなかった。人事考課はされたはずだがどうだったか記憶にない。

そのひとは結局一年ぐらいして「やっぱ向いてなかったからマネージャやめるわ」と IC に戻ってしまった。