Link: ニューヨーク・タイムズは日本を「独裁政権」と呼んだのか、気炎を吐いても息さわやか - ネットロアをめぐる冒険
via ニューヨーク・タイムズは日本を「独裁政権」と呼んだのか、気炎を吐いても息さわやか - ネットロアをめぐる冒険
珍しく NYT が話題になってるので眺める。
- 朝日新聞、というか新聞全般はいつも元記事をリンクしないのがひどい。
- それはそれとして <Japan is a modern democracy where freedom of the press is enshrined in the Constitution, which American occupiers drafted after the war. It is not the kind of place where journalists are denounced as the “enemy of the people.” Still> ときて <the government sometimes behaves in ways more reminiscent of authoritarian regimes> と「現代民主主義」の対なうえに "regime" なんだからネガティブさを強調する語として「独裁政権」は別によくね?
- リンクされてる「権威主義体制」訳の文章はアカデミアの書いたテキストで、それとこのライトなポートレイト記事の訳を比べても仕方なくね?
- NYTimes がすごい無色透明な報道機関であるという前提がある気がするが左よりで opinionated なメディアだし、そうでなくてもアメリカのニュースは(リンク元の asahi.com の特集が示唆するように) Trump がらみで言論の自由にピリピリしてるんだから、歯に衣着せぬ感じな「それでも日本政府はときに独裁政権をほうふつとさせる振る舞いをしている」という訳は権威主義体制みたいなやんわりワードより雰囲気を伝えている。なにかニュートラルな話をしてるんじゃなくて直球でディスらてんのよ?そのニュアンスを伝えたかったんでしょ。
- まあ記事はディスりが本題ではなくこの記者の存在の興味深さなので、NYT が日本を独裁のようと批判したとする cherry picking がフェアかどうかはまた別。どちらかというと掴みためののレトリックじゃね。
- ちなみにコメント数を見ればわかるとおりアメリカ人には興味ない話題なのだった。東の方には独裁政権いっぱいあるからね。(自分も冒頭記事を読むまで Ms. Mochizuki 知らなかった。日本のニュースもうちょっと読んだほうがいいな・・・)
Fragment に書いていたら長くなったので別記事にしてみる、という実験。
一歩下がって考えるに、これは翻訳というものの限界な気がする。
自分の感覚だと「権威主義」という言葉はアメリカ人のいう "authoritarian" ほどネガティブな空気を纏っていない。それはたぶん歴史的に割と authoritarianism っぽい文化が通底しているからな気がする。ついでに「体制」という後も、戦後すぐならともかく 21 世紀には "regime" ほどネガティブなニュアンスがない。
なので "権威主義体制" は直訳としては正確だが "authoritarian regime" という語が孕む「うげーヤベーなあいつら」という雰囲気を伝えていない。でもこれって直接的な意味のマッピングと価値観や雰囲気のマッピングの間にある不一致がうんだ lost in translation だよね。
ついでにアメリカ人にしてみれば authoritarian も dictatorship も等しく悪なので、そこを繊細に使い分ける動機はない。NYT の寄稿者の中にはそういうのを気にする書き手もいるだろうけれど。リンク先の記事はもうちょっと雑。
朝日新聞の記事が雑さのギャップにつけこんで我田引水してるのは事実だと思うのでそこにケチをつけるのはいいと思うけど、ある語の訳を nitpick するのは生産的ではない気がする。
メタなマウントとして、リンク先の記事も朝日新聞も NYT を絶対視しすぎ。NYT -> asahi.com でもちこまれた歪曲は NYT 元記事の左傾や雑さによる歪みに対して significant なのか?NYT いいメディアだけど別に隈なくクオリティ高いわけじゃないよ?日本の話なんてとくに眉唾がちなんだから、ちゃんと読んでケチつけといたほうがよくね?
我ながらクソのような出羽守を書いてしまった・・・。しかしそうした衝動の掃き溜めとしてブログ書いてるからいいのです。