Tateno Culture

自分の勤務先はいまいちこう、小規模でカジュアルな情報共有がやりづらい。Google Apps を使っているので、まあメーリングリストはある。いちおうチャットもある。Docs もある。Sites もある。社内ソーシャルメディアもある。ソースツリーに Markdown をチェックインする文書化インフラもある。Bugtracker もある。しかし。あれがないんだよあれが。Wiki と Blog がつくっついたみたいな、日本の会社は多かれ少なかれ使ってるアレ。Qiita Team, Esa, Kibela とかそういうやつ。なんでないの?

勤務先は融通の聞かない大企業だから仕方ない面はある。しかし英語圏、似たようなツール全然なくね? グループウェアとか Slack クローンとか Google Docs の亜種は腐るほどあるくせになぜアレっぽいやつはないの?おかしくね。Confluence は違うんだよ!Wiki は違うの!Wiki でも代用できるけどそうじゃないの!もっと時系列とカテゴリーとソーシャルメディアと日報と日記と意見と説明をいいかんじに雑に混ぜたようなそういうやつなの!なんでわかんないのきみたち!!?

と思っていたのだけれど、まあこれはもしかしたら日本語プログラマ圏固有の文化なのかな、と思うようになった。というのも結局こいつらはみな secondlife こと Yuichi Tateno 氏がはてな社やら Cookpad 社やらで内製および製品化したウェブアプリから多かれ少なかれ、そして直接的間接的な形で影響を受けて生まれた親戚みたいなもの。言ってみれば Tateno Culture なのだ・・・と自分は自分は雑に理解している。でも 7 割くらいあってるよね多分。

結局アメリカ製の気の利いた、ものに限らずパクリでもそうだけれど、様々な生産性ツールだって、作り手がキャリアを通じて得た体験や知見から生まれている。そして彼らは誰一人として Yuichi Tateno と一緒に働いていないのである。(たぶん。)残念すぎるが、まあ仕方ないね。日本とアメリカ遠いからね・・・。

自分も 10 年くらい前に日本の会社で働いていたとき、Wiki で似たようなことをしていた。そしてそれは特別なことではなかったと思う。それはなんていうか日本語圏プログラマなウェブピープルの時代の空気で、それも当時はあんまし気にしてなかったけど多分もとをたどれば Yuichi Tateno 周辺カルチャーにたどり着いたのではないだろうか。そして自分が悪態をつきながら渋々 Google Apps を使っている間に、そうした文化は上に挙げたような製品たちに結実していったのだった。やーよかったね。羨ましい。

最近なんとか Google Apps 上で擬似的にそういうことができないかと試行錯誤してるんだけど、いまのところ全然むりなかんじ。自分は thought leader でもないし。

現状のアレらのツールは自分の勤務先のような社員数万人の企業までスケールするようには見えない。でも同じようなものがもし英語圏で流行り、あわよく Unicorn 化したりした暁にはなんらかの形で Google Apps  や Office 365 に受け入れたかもしれないし (Slack を見よ)、そうでなくても内製のしょぼいクローンくらいは作られたであろう。

そういうことが起こらなかったのは残念だけれど、どちらかというと固有名詞の正確さはさておき先の Tateno Culture 的な時代精神が花開いていくつものユニークな製品をうみだした素敵な事実を appreciate したいいうはなしです。


上の製品たちが英語圏に展開すればいいのでは、と期待する人がいるかもしれないけれど、それはなさそうだと自分が考えているのはわかってもらえると思う。人々が共有する時代の空気から生まれたものが、空気の繋がっていない違う世界に広がっていくのは難しいよね。

あと勤務先の名誉のためにいっておくとそういうアレがない以外はまあまあうまく回っているのではないでしょうか。


2019/8/26 追記

本家? のはてなグループはおわってしまったと教わった: はてなグループ終了に寄せて - #生存戦略 、それは - subtech