Book: The Essential Drucker

The Essential Drucker: The Best of Sixty Years of Peter Drucker's Essential Writings on Management (Play Books)

仕事のやる気を立て直すにあたり何か背筋が伸びる感じの本で読もう・・・ではなく聴こうと思い、そういえば Drucker って人気あるけど読んだことなかったなということで一冊。

古臭いし、前半のマネジメントの話は下々的にはどうでもよかったが、Knowledge Worker という概念を売り込む後半はそれなりによかった。なにかとリーダーシップの話になってしまう世の中の本と比べ、Knowledge Worker というのは専門職としてあるのだよ、という話をするので。この Knowledge Worker という概念、今ではあまり聞かなくなってしまった気がする。当たり前になってしまったのかもしれないし、他の名詞に置き代えられたのかもしれない。

もう少し細部を理解しようと paperback を買い直し、昨日届いたところ。読んだらまた感想でも書きます。


ところで Drucker, 日本では妙に人気がある気がする。アメリカでもそこそこ読まれているっぽいけれど, Amazon のレビューの星の数はそこらへんの作家と大差ない。

Drucker の文章にはよく日本がでてくる。Zaibatsu だとか Toyota だとか。昔の日本の影響力が垣間見えて感慨深い。このへんの日本贔屓がかの国での人気の秘密なのだろうか。

・・・とか思いながら paperback の冒頭を読んでいたら驚くべき事実が明らかになった: The Essential Drucker の元になったのは、なんと日本の Drucker 読み物なのだという。Drucker ファンである Mr. Ueda が、過去に当人の書き散らかしたの何冊もの本を通読して抜粋、編集しなおし、三冊にまとめたのだという。それを気に入った Drucker が Mr. Ueda バージョンを逆輸入した際、三冊だと多いねということで出版社が更に絞り込んで一冊にした。それがこの The Essential Drucker らしい。まじかー。Management の話はいらないから Individuals の部分だけ読みたいなーとおもいつつ聴いていたのだが、日本語ではそういう本がある。しかし英語にはない。なんだそりゃ・・・。

Amazon.co.jp の著者ページ をみると、Mr. Ueda はその後も様々なまとめバージョンの Drucker 本を出して啓蒙に勤しんでいる様子が伺える。つまり日本語圏での Drucker 人気は必ずしも Drucker の昔の文章に日本がよく出てくるからではなく、熱狂的 Drucker ファンであるところの Mr. Ueda ががんばったからなのだった! Drucker は本の冒頭で Mr. Ueda を指し "He is thus thoroughly familiar with my work - in fact, he knows it better than I do." とか言っている。そんなこと言われると原著厨の自分ですら Drucker は日本語で読んだ方が良いんじゃね、という気がしてきてしまう。Paperback 買ってしまったじゃないか...まあ絞られた分薄くなってるのでよしとしよう...。


訳者のがんばりでオリジナルの出版国より翻訳先で人気が出てしまう作家は確かにおり、たとえば柴田元幸が訳している作家とかはそういう面がある。Paul Auster にしろ Stuart Dybek にしろ、全然人気なくてびびる。柴田元幸の訳本が翻訳文学ファン以外でどれだけ人気なのかといわれるとわからないけれど・・・。

しかし超有名人だと思っていた Drucker が Paul Auster 枠だったとは、Mr. Ueda がんばったなあ。