Emotional Labor and Leadership
Stop Calling Women Nags という記事が一部で話題になっていた。家事における "Emotional Labor" の存在を appreciate しろよ男ども、という話。男どもに文句があるのはわかるが記事にあるような仕事...言われなくても片付けをするとか...は Emotional Labor にあたるのだろうか。
同じ話題を扱ったウェブ漫画があると HN のスレで知り、眺めてみる。これは同じ問題を "Mental Overhead" と呼んでいる。この方が適切な名前に思える。
自分が Emotional Labor ... というか「感情労働」について知ったのは、むかし「管理される心」を読んだときのことだった。原書の紹介をみると、この時点では Emotional work と呼ばれていた模様。まあ Labor の方がやらされている感があってよい。ここでいう emotional work/labor は、仕事のために感情をコントロールする、装う必要のある仕事を指している。客室乗務員とか看護の仕事とか。日本のサービス業全般そうじゃね、という話もあるがそれはさておくとして、部屋の片付けは別に emotional labor ではないよな。
なぜこんな言葉の overload が起こったのか。冒頭の記事からリンクされている資料を読んで謎がとけた。この資料は、2015 年に書かれた Emotional Labor に関するエッセイ をめぐる MetaFilter (暇つぶしサイト) 上の議論をまとめたものだった。このエッセイ自体は emotional labor を語義通りに扱っているのだが、なぜか MetaFilter の議論は仕事をしない男たちを糾弾するスレへと発展し、その内容を "Emotional Labor" の名前の下でまとめたりした人がいたものだから emotional labor = 男たちがやらない家事, という overload が生まれたのだな。まあ男たちがやらない家事の中に emotional labor が含まれるのは事実かもしれないが、この誤ったラベルづけは gender bias をめぐる feminist の態度を stereotypify して dichotomy を深めるだけではなかろうか... 一部の男たちが家事をしないのはそれが emotional labor だからではなく、単にしないだけだとおもうよ...
その点これを mental overhead だと指摘した Emma の漫画は正しい。この漫画では家事を project management に例えている。Project かどうかはともかく management としての側面を無視して家事を単純な routine labor だとみなすのが家事にたいする無理解の核の一つだと自分も 思う。
そしてインターネッツを眺める限り、残念ながら家事をしない男たちへに苦情を申し立てている女性たちの多くは特別よい management practitioner すなわち manager ではないように読める。世の中の管理職もたいがいゴミであることを考えるとこれは別に責められることではない。一方で、家事をしない男たちの問題をボトムアップで解決するには女性たちはマネージメントとかリーダーシップとかメンタリングとかを勉強するのが早道なのではないかとも思う。ようするに使えない部下や後輩(=夫など)をもってしまった上司や先輩はどうやってその部下なり後輩なりを育てていけばよいのか。まあ使えない部下の例は不適切かもしれないけれど、たとえば TL としてどうやってチームに仕事を分担していけばいいのか。
たとえば夫を micromanage したくないという女性たちは夫に役割の big picture を説明した上で delegate しているのか。あまりそういう様子はない。家事の分担が機能不全になっている人たちの問題は使えない部下たる夫だけでなく口うるさい上司たる妻にも改善できる点はあるのではないか。夫婦間での上司/部下という関係の fairness についてはさておくとして。たまにみかける夫を「褒めて伸ばす」みたいな言説はこの方向性のひとつと見なせなくもない。まあでも leadership とか coaching とかの本を何冊か読むともっと先に行けると思うのだよな。
That being said, 家事の一部に emotional labor が含まれているのは事実で、自分はそれをサボっているなあ。個人的にはそれが冒頭の記事の takeaway なのだった。人付き合い、近所づきあい、親戚づきあいみたいのを自分は完全にゆこっぷ(奥さん)に任せてしまっている。少しはやらないといけない・・・とおもいつつ腰が重い・・・。
ところでそういう emotional labor としての diplomacy は伝統的に女性が得意というのはほんとだろうか? また仕事の話にもどると, 外交や折衷は管理職の仕事の重要な部分を占めているはずだが、管理職はだいたい男である。これは 1. 男たちは別に diplomacy が苦手じゃない。 2. 女性が管理職になった方が世の中色々うまくいく, のどちらだろうね。白黒はっきりした話でもないだろうけれど。
まあ男たちがみな管理職になるわけではない点を踏まえると、したっぱの男たち(自分とか)は diplomacy が苦手かもしれず、家でも人付き合いの役に立たず、まったく使えない気がしてきた。つらい。新たにそんな悩みが生まれた昨今。