Assets and Earnings

すごいプログラマのすごさの何割かは、そのプログラマが過去に書いたコードから来ている。割合には個人差がある。

たとえば Google の legendary programmer たる Jeff Dean. Jeff Dean は色々すごいことをしてきた。今でも相変わらずすごい。でも Jeff Dean がすごいことをできる理由の何割かは、Jeff Dean のコードを動かしているインフラ自身も Jeff Dean が作ったからではないか。ライブラリから実行環境まで、インフラに精通しているからこそ問題を速く正確に突き止めて解決できる。莫大な社内のコード資産を使いこなすのも朝飯前。自分の成果を leverage しているとも言える。精通しているだけでなく、そうした基盤のデザイン自体も何らかな形で Jeff Dean の仕事 ...すなわち Google の最新コアテクノロジ... に fit している。ありものを使わず色々作ってきたのは、まさにそのためなわけだから。

もし Jeff Dean がある日どこかのソーシャルメディアなスタートアップに転職し、AWS の上に作られた Scala バックエンド群の刷新みたいなプロジェクトを任せられたらどうなるだろう。たぶんちゃんとやってのけるだろうけれど、伝説的といえる活躍ができるかどうは不透明だと思う。積み上げた成果の利息は馬鹿にならない。

Jeff Dean に限らず、多くのエース級プログラマは自分の仕事自体を足場に次の歩みを進める。その仕事がだめにならないかぎり、利息が利息を産んで成果を加速する。すごく大きな成果を上げる唯一の手段が、足場を組み立ててながら上に登るこの方法だと言ってもいい。

一方で、エース級をめざしたりめざさなかったりする下々の者が目標としてすごいプログラマに尊敬の眼差しを向けるときは、相手のすごさの内訳にも思いを巡らせると良い。その人は資産の利息で暮らしているのか・・・つまりそれまでの成果をスケールさせる仕事がうまいのか。それとも今現在の稼ぎ・・・すなわち新しいことを学んで形にするスループット・・・が多いのか。両方か。二つの成果はどう関係しているか。

利息で暮らすのがダサいという話ではない。それはそれでいい。というかちょっと羨ましい。ただ自分の目指す姿、ロールモデルとしてエースプログラマを眺めるときは、そのすごさの出処を気にしないと空回りしがち。手持ちの資産がないのに利息生活者の真似をしてもうまくいかない。あるいは蓄えがあるのにそれを活かさず日銭ばかりを気にしても勿体無い。


名誉と保身と念のため補足しておくと、Jeff Dean が利息だけで暮らしてるという主張じゃないですよ。言うまでもないけれど。