朝からうんざり

Keras の作者が日本のテクノロジの悪口を言った話がなにかのオンラインメディアに取り上げられ、それを日本の IT ナショナリストが腐していた後続の発言を見ると、Keras の作者は日本では国産のライブラリばかり使い Keras を使っていないことに苛立ちこうした発言に至った様子が伺える。

なんだかうんざりしてしまった。まず Keras や周辺ライブラリの普及がおもったより進まない日本 IT コミュニティへの苛立ちを表立ったところに帝国主義的な言い回しで書いてしまう Keras 作者の troll ぶりにがっかり。その心の狭さに Keras を使う気が少し削がれた。非英語圏なら自国贔屓は多かれ少なかれどこにでもある。日本なんてソフトウェアの世界ではほとんど存在感ないんだからほっとけばいいのに、なまじ日本語が読めるだけに目についてしまうのだろうか。

たとえば自分が Keras のバグをみつけてレポートしたり PR を送ったりしたとして、自分の nationality への蔑視を表立って口にしている人を相手にするのは気が重い。いわれのないハラスメントを受けそうで。まあ自分が Keras のバグをみつける可能性はほぼゼロなのでその心配はないとしても、Keras 情報を求めてソーシャルメディアを見ていたら自分の出身国の悪口がランダムに目に入ってくるかもしれないと思うと意欲を削がれる。

NN の higher level abstraction は現状ほぼ Keras 一択。ハラスメントの心配はほぼ杞憂だろうし日本の悪口で動じないくらいには nationality を detach できている外国暮らしの身。めげずに Keras を使うと思う。でも強い立場にいるライブラリの作者だからこそ弱小のことはそっとしといてほしいよね。

よりがっかりしたのは日本の IT ナショナリストの発言の方。はー。色々とみっともない・・・。

一瞥すればわかりとおり、この人は Keras 作者と対話する気は全くない。元の troll 発言を口実に昔話をしていい気分になったり、そういう話に呼応する人の関心を引いてナショナリストとしてのカルマを高めているだけ。書き手の会社は NN まわりの仕事もしているようなので、もしかしたら将来自社製のミドルウェアを売り込む際に Keras 作者への antipathy を引き合いに出したいのかもしれない...と、最後のは我ながら下品な憶測で、さすがにないと思うけれども。

Keras 作者の発言の文脈は、日本人もどうせそのうち Keras 使うようになるんでしょという話なわけで、そこに昔の栄光を引き合いに出して反論するのはまったく不毛。ナショナリストとして生産的でありたいなら、Keras 作者のバカにしている日本産のライブラリを競争力のある良いものに育てて見返すことに注力するとか、せめてその国産ライブラリの Keras に対する利点を議論するとかしてほしかった。テクノロジの世界で昔話しても仕方ないでしょ・・・。

まあナショナリストが一般に残念な発言をする傾向にあるのは仕方ないとしても、その記事に対する人々の反応が割と好意的なのが自分のうんざりにとどめをさした。ソーシャルメディア、この手の安っちいナショナリズムと相性良すぎ。おまえら!どうでもいい愛国美談に酔ってないで前を見ろ!がんばれ!

そんなかんじで朝から疲れてしまったけれど、書き出したら気が済んだ。日本のソフトウェア産業にはがんばってほしいもんです。ほんとに。