Funemployment

“A beginner’s guide to funemployment” を読んで Funemployment という言葉を知った。満足に楽しくやってる無職を指す言葉らしい。

Urban dictionary に登録されたのは 2004 年。 Google Trend によれば 2009 年に盛り上がり、 今日までゆっくりと滑空を続けている。2009 年といえばサブプライム危機で大きな不況があった年。 当時の記事では 不況の煽りでレイオフされた若者がいい機会だからと funemployed を自称し、 仕事をさがすかわりに楽しくフラフラしている様が描かれている。 強がりのような楽観のような、アメリカ的いいかげんさが眩しい。いま流行が下火なのは好景気の裏返しだろう。

私の知り合いには現役フルタイムを含め funemployment 経験者が一定数いる。 羨望の眼差しで体験談に聞き入ったのを思い出す。彼らは自分を無職や NEET と呼ぶ。 間違ってはいないが、言葉の示唆する悲壮感を逆手にとる感じの悪さが鼻についた。 まあ完全に労働者の僻みなんだけど、彼らが funemployed を名乗っていたら手放しで羨ましがってあげられたかもしれない。 私もときどき無職になりたいと呟いてしまうことがある。このとき求めているのは funemployment であって失業ではない。 身勝手な願望に名前がついてよかった。Sabbatical と呼ぶ人もいる。でも funemployed の方がポップ。 日本語だと “有閑無職” くらいだろうか。いずれにせよ謙遜よりも強がり相手のほうが付き合いやすい。

冒頭の記事も認めるとおり, funemployment はどこか特権的だ。 最終的にはなんとかできる自負があるからこそ楽しさを見いだせる。 不景気だった 2009 年の funemployment は強がりだったかもしれない。 でもいま funemployed になるプログラマは余裕があるにちがいない。 余裕の裏付けは若さかもしれないし、高い技能かもしれないし、金銭的なゆとりかもしれない。 自国経済への信頼かもしれないし、性格からくる楽観かもしれない。私の目にはどれも手の届かない贅沢に映る。

だから仕事のない優雅な日々を満喫されている諸兄は無職や NEET を気取らず胸を張って funemployed を名乗り、 素直に身分を羨ましがらせてほしい。明日も仕事の会社員はそうおもう次第。 おまえらが無印無職を連呼するのはほんとに、むかつく。いいなあ。